桃の花を溺れるほどに愛してる

「……」

「……」

「……桃花さん?」

「……そーです」


 一瞬の沈黙があったかと思いきや、春人はバッと起き上がってそのまま後ろへと倒れ、ベッドから落ちた。


「ちょっ!春人?!」


 私は、慌ててベッドの上から春人のことを覗き見る。「いてて……」と腰をさする春人が、そこにはいた。


「春人……だいじょ――」

「――うわぁーっ!僕は寝ながらとはいえ、なんてことをしてしまったんでしょうか!桃花さんっ、本当に申し訳ございませんーっ!」


 「大丈夫?」って声をかけようと思ったら、逆に謝られた……。


「いや、別にいいんだけどさ……」


 ちょっと……いや、かなりドキドキしたけれど、嫌じゃあなかったし。

 って、ドキドキしている場合じゃない!春人が目覚めたら真っ先に言おうって決めていた言葉を……今、ちゃんと言わなくちゃ。

 伝えなくちゃ。

 私の、想いを。


「あのね、春人。……ごめんなさい」

「桃花さん……?」


 いきなり謝られたことに驚いた様子の春人だったけど、私が今から言わんとしていることを察してくれたのか、春人はそれ以降に何も言わず、そっと耳を傾けてくれた。