桃の花を溺れるほどに愛してる

 再びインターネットを立ち上げ、情報を確認する。どうやら店は開いているらしく、ホッと胸を撫で下ろした。

 適当に朝食を胃の中に押し込んだり、顔を洗ったり歯を磨いたりして用意を済ませた末、僕はそのインターネットに表示されている1番近くにある鍵屋さんに向かったんだ。


「すみませーん……」


 自転車をこいで10分程度でたどり着いた鍵屋さんは、思っていた以上に古いようだった。昔からやっている店なんだろうか?

 扉を開き、おそるおそる中に入ると、奥の方から白髪のおじいさんが出て来た。なんとも言えない威圧感のある男性だ。もしかして、怖い人なのかな……?


「なんの用じゃ?」

「鍵を……作ってほしいんです」

「ほう?自分の家のか?」

「えっ……と、はい……」


 あまり嘘はつきたくないけれど、これは桃花さんを守るためなんだ。

 だれかを守るための嘘なんだから、ちょっとくらいなら、ついちゃっても大丈夫だよね……?


「どれ、元の鍵を見せてみろ」

「えっと、元の鍵をも無くしちゃって……鍵穴のところに粘土を詰め込んで型をとってみたんですが、これじゃあダメですかね……?」


 僕は鞄に入れておいた、桃花さんの家の鍵穴の粘土の型を取り出し、おじいさんに差し出した。