桃の花を溺れるほどに愛してる

 僕はさっそく、なるべく誰にも見付からないように、桃花さんの家に自転車で向かったのだった。


「……うわぁ」


 思っていたよりも大きな一軒家に、僕は思わず吐息を漏らす。

 ……って、みとれているいる場合じゃ無かった。

 さっそく持ってきていた粘土を玄関の扉の鍵穴に詰め、しばらくの間はそのまま放置。

 頃合いだと思ったら、それを引きずり出す。すると、鍵穴の形に象った固まった粘土の完成!

 よし、大成功だ!

 あとはこれを鍵屋さんのところに持っていって、ちゃんとしたモノに作り替えてもらえば……合い鍵の完成ということになる。

 合い鍵を作ってもらうことは犯罪ではないため、お咎めなし……のはずなんだけれど、はたしてどうだろう?

 僕はそわそわとした気持ちを抱きながら、自分の家に帰った。

 今日はもう鍵屋は閉店しているだろうから、明日にすぐにでも鍵屋のところに行ってみよう。

 期待と不安を胸に抱きながら、僕はベッドの上で静かに横になり、眠りについたんだ。

 ――そして、次の日。

 窓からは気持ちのいい日差しが差し込んできた。

 今日は学校はお休みのため、朝からやりたいことが出来るわけだけれど……この曜日、鍵屋さんの店って開いているのかな……?