桃の花を溺れるほどに愛してる

「僕なんか……って言うの、なるべく控えた方がいいですよっ」

「え……?」

「謙遜のつもりかもしれないけれど、そんな……自分は格下だみたいな言い方をするのはよくないと思いますし。もっと自分に自信を持たないと!ですよっ」


 今までずっとそういうふうに言ってきていたから、それが僕の中では当たり前だったから、初めて山内さんに指摘されてビックリした。

 謙遜も何も、僕は本当に心の底からそう思って生きてきたから……。

 でも、なるべく控えるようにはした方がいいのかな?そう言ってしまわないように、気をつけないと。


「はい。気をつけますっ」

「よし!それじゃあ、また後で職場で会いましょうね!未来の院長さんっ!」

「いんちょっ……?!」


 そうか。僕がこの病院で働くということは、父さんの仕事を継ぐこと……すなわち、いずれ僕がこの病院の院長になることを指すんだ。

 うわ、僕なんかに務まるのかなぁ……って、また“僕なんか”って言ってしまった。無意識のうちに使ってしまっているなぁ、こりゃ。

 山内さんはニコニコと微笑みながら、屋上から去っていった。