桃の花を溺れるほどに愛してる

「あっ、いやっ、こちらの話なので、気にしないでください……あはは……」

「そうなんです?いい写真が撮れたら見せてくださいねっ」


 あっ。山内さんは、僕が言ったカメラを、写真を撮る方のカメラだと勘違いしている……みたい?

 僕が言ったカメラは、ビデオカメラ……のことなんだけれど、わざわざ訂正する必要はないかな、うん。


「はは、いいモノが撮れたら、ですね」

「はいっ!」

「それで……山内さんは何をしにこの屋上へいらしたんですか?」

「んー、気分転換、ですかね?この病院からの眺めって、とっても素敵ですから……」

「あー。確かに。そうですね」


 しばらく一緒に街の景色を眺めていると、山内さんは言った。


「それじゃあ、私はもう職場に戻りますっ」

「え?!さっき来たばかりなのに、ですか?!」

「春人くん、なんだか考え事をしているみたいでしたから……。邪魔をしちゃ悪いかなーって」

「えっ……そんな、僕なんかのために気を使わないでくださいよ」


 確かに桃花さんのことで考え事はしていたけれど、別に山内さんがここにいても、全然問題はないのに……。


「それっ!」

「っ?!」


 ビシッと指を差してきた山内さんに、僕はまたもやビクリッと肩を震わせた。