「それじゃあ……!」
「だがっ!」
父さんの威圧感に、僕は思わず口をつぐんだ。
「それは同時に、彼女にとってつらいことでもある。いいか?自分の身を守るために、彼女の脳はそのつらい部分の記憶を消したんだ。言い換えれば、脳が消さないといけないと判断したほどのつらさが、その記憶に詰まっている」
「……」
「キッカケを与えてやればいいだけのことなのだから、記憶を元に戻すのは実に簡単だ。しかし、それが本当に彼女にとっていいことなのか……幸せなことなのかは、誰にも分からない」
……桃花さんの脳が、消さないといけないと判断したほどの記憶。
記憶を元に戻すことが、彼女にとっていいことなのかは誰にも分からない……。今の記憶を失っている桃花さん自身にでさえ、判断のしようがない……ということか。
「記憶を元に戻したところで、彼女は精神的ショックに押し潰されて壊れてしまうかもしれない。消えた約2ヶ月のこととは引き換えに、他の記憶が失われるかもしれない……。記憶とは実に不思議なモノで、思い通りにはいかないものなんだよ、春人」
父さんの言う通りだ。
あえて危ない道を歩くくらいなら、いっそ、記憶を失っているという事実さえ分からないでいる、今のこのままの方が桃花さんにとっては幸せなことなのかもしれない……。
「だがっ!」
父さんの威圧感に、僕は思わず口をつぐんだ。
「それは同時に、彼女にとってつらいことでもある。いいか?自分の身を守るために、彼女の脳はそのつらい部分の記憶を消したんだ。言い換えれば、脳が消さないといけないと判断したほどのつらさが、その記憶に詰まっている」
「……」
「キッカケを与えてやればいいだけのことなのだから、記憶を元に戻すのは実に簡単だ。しかし、それが本当に彼女にとっていいことなのか……幸せなことなのかは、誰にも分からない」
……桃花さんの脳が、消さないといけないと判断したほどの記憶。
記憶を元に戻すことが、彼女にとっていいことなのかは誰にも分からない……。今の記憶を失っている桃花さん自身にでさえ、判断のしようがない……ということか。
「記憶を元に戻したところで、彼女は精神的ショックに押し潰されて壊れてしまうかもしれない。消えた約2ヶ月のこととは引き換えに、他の記憶が失われるかもしれない……。記憶とは実に不思議なモノで、思い通りにはいかないものなんだよ、春人」
父さんの言う通りだ。
あえて危ない道を歩くくらいなら、いっそ、記憶を失っているという事実さえ分からないでいる、今のこのままの方が桃花さんにとっては幸せなことなのかもしれない……。



