桃の花を溺れるほどに愛してる

 飲んだ薬を洗い流すためにも胃の中を洗浄し、栄養が必要なために点滴を打たせた。

 医者側としては最善策を尽くした。あとは桃花さん次第。桃花さんががんばれば、また目覚めてくれるはずなんだ……!

 病院に運び込まれてすぐ、桃花さんの両親がやって来た。ベッドの上で横になっている娘を見るや否や、母親の方は泣き崩れてしまった。


「私たちが仕事で立て込んで、桃花の相手をしてあげられなかったから……だからこんなことになったんだわ……っ!」

「そうかも、しれないな……。桃花、本当にすまない……!最近残業ばっかりで会話もロクに出来なかったからな……っ」

「あなた。私、今の仕事をやめるわ。それでずっと桃花のそばについているの。そうしたら桃花も寂しくないわよね……?」

「お前が決めたことなら、俺は反対はしないよ。俺もなるべく残業はしないようにして、はやく帰ってくるよ」


 桃花さんのお母さんに、お父さん……。とても、優しい人達なんだ。

 僕は心のどこかで安心していた。桃花さんの両親が血も涙もないような人達じゃなくて、優しい人達で、本当によかった……。


「僕らは最善策を尽くしました。あとは桃花さ……んんっ、彼女が、目覚めるのを待つだけです」


 僕がそう告げると、両親の2人はコクンッとうなずき、そして、見守るようにして桃花さんの側についたのだった。