桃の花を溺れるほどに愛してる

 一生懸命に桃花さんの手当てをしながら、父さんに声をかける。

 外傷はまったく無いようだけれど、今朝にはあんなにも元気だった桃花さんに、一体何があったというのだろうか?


「父さん!桃花さんに一体何があったんですか?!」

「お前、この娘の知り合いなのかっ?この娘はうちの薬保管庫の薬を盗んだ張本人だ!ほら、ニュースにも流れていただろっ?!」

「えっ?!」


 確かにニュースにも流れていたけれど……それの犯人が、桃花さんっ?!一体、どうしてっ?!


「この娘はその盗んだ薬を一気に全部飲んで、自殺をはかったんだ!」


 じさ……つ……?

 桃花さんが……自殺……?

 それが僕ならまだしも、どうして桃花さんが自殺なんてしなくちゃいけないんだよ……っ?!


「詳しい事情は分からないが、恋愛が絡んでいるとかなんとか……」


 父さんのその発言を聞いて、桃花さんと初めて会った日のことが頭を過ぎる。


 ――「その感情が“嫌い”だろうと“憎い”だろうと、無関心に比べたら何かしら思われるだけいいと思うよ?」

 ――「私は……無関心どころか、相手は私のことをまったく知らないからさ……。こんなことを言ったらアンタに失礼かもしれないけど、私は何かしら思われているアンタが羨ましい」


 まさか……あの発言って……片想いを抱いている相手のことを言っていた……?