桃の花を溺れるほどに愛してる

「で?もっとちゃんと謝ってよ」

「ごめんなさい……!」

「謝る相手、間違ってない?私に謝ってどうするの?」

「っ!」


 大人しい女子生徒は、ゆっくりと僕の方を向いた。そして、頭を下げて、言う。


「天霧くん!今まで酷いことをしてきて、本当にごめんなさい……っ!」


 あやま、られた……。

 今までのこともあって、目の前の状況が信じられなくて、頭の中がクラクラする。これは夢?そう疑わざる得ない状況だった。


「……私からは何も“言えない”わ。あとは春人の気持ち次第だから」


 桃花さんはそう言った。

 それを引き金に、次々と僕に今までのことを謝ってくるクラスメートたち。

 そんな光景に圧倒されたのか、最終的には僕の元·カノジョも謝ってくれた。


「もういいですよ。気にしていませんから……」


 僕がそう言うも、彼らは謝るのをやめない。しばらくはそんな言動の繰り返しだった……。

 あっ、そうだ。
 桃花さんは……!

 桃花さんのいた廊下の方に目を向けると、桃花さんは優しげに微笑みながら僕のことを見つめていた。

 僕は、今回の一連のお礼を言おうとしたのだけれど――。


「――さようなら」


 桃花さんの口がそう動いたかと思いきや、桃花さんは自分の学校に帰るためか、スイッと姿を消してしまった。