桃の花を溺れるほどに愛してる

「そうだけど?あんた、なに?頭がイッちゃってる子?病院に連れて行ってあげましょうかー?」

「あっ、病院なら春人のところに行きなよー。彼、有名な病院の息子なんだからさ♪」

「っていうか、年上には敬語を使えっつーの!」


 ――「ハァ?アンタなんかただの金づるだから。なに?今頃それに気が付いたの?バッカじゃねーの?」

 かつて、僕のカノジョだった女子生徒と、その友達が、楽しそうに桃花さんに話し掛けている。

 やめろ。桃花さんにそんな口を聞くな。桃花さんをバカにするな。桃花さんに近付くな……っ!


「私、アンタら人間のクズに言いたいことがあって、わざわざここに来てあげたんだけど?」


 しかし、桃花さんは彼女らの発言に気にもしていないのか、凛とした様子でそう言ってのけた。


「は?コイツ、何様?」

「超ムカつくんですけど?」


 桃花さんの表情は垂れている前髪のせいで分からなかったけれど、次の瞬間、桃花さんはバッと顔をあげた。

 目に精気が宿っていない……。それでいて、何かを強く心に決めた目をした桃花さんが、そこにいた。


「テメェら全員、」


 桃花さんは、言い放つ。


「天霧春人に謝罪しろ」