桃の花を溺れるほどに愛してる

「――テメェらに春人の友達を名乗る資格なんて、1ミリ足りともねぇーんだよっ!!!」


 校門から聴こえた桃花さんの声に、僕の身体はビクッとはねた。

 ……え?僕のこと?トモダチを名乗る資格なんて……彼らには無い?

 もう1度、目を窓の向こうの校門にやった。そこには、クラスメートの男子生徒たちが、桃花さんの周りで横になって倒れている様子。

 僕が目をそらしている一瞬の間に、一体、何があった……?

 桃花さんは実は空手とか柔道を習っていて、それで強い……とか?

 バクバクと心臓が高鳴って、耳のすぐ隣で聴こえる気がする。


「あの子、なにー?意味不明なんですけどー?」

「ってか、こわっ!」

「……あれ?ちょっ、あの子、こっちにむかってきてね?」


 桃花さんはゆっくりと、確実に校舎の方に向かって歩いてきていた。

 そして、ゆっくりと、顔をこちらに向ける。僕と目が合う。優しげな笑みを浮かべている、ように見えた。

 桃花さん……まさか……。まさか、僕をいじめているヤツらを一喝しに来た……とかじゃ、ないよね?まさか、本当に……?


「ここ、天霧春人さんのいる教室?」


 ――はっ!

 廊下から桃花さんの声が聴こえて、慌てて振り返る。