桃の花を溺れるほどに愛してる

「臨時ニュースです。先程、●●市にある天霧総合病院に強盗が入り、薬保管庫にある薬を大量に盗んでいった模様です。ナースのひとりが盗まれていると気が付いた時には、もうすでに強盗の姿はなく、犯人の目星がつかずに捜査は行き詰まっている模様です」


 天霧総合病院の薬保管庫にあった薬が……大量に盗まれたっ?!

 しかも、犯行は先程って……その時間、僕もいたんじゃ……?

 でも、そんな見るからに怪しい人はいなかったと思うけど……。一体、だれがそんなことをしたんだろう……?


「夏美さん、大丈夫。きっとすぐに犯人は見付かるよ。だからそんなに焦らなくても大丈夫だよ」

「そっ、そうだと……いいんだけど……」


 結局、その日のうちは、警察の人達からそれらしい情報を得ることは出来なかったのだけれど。

 ご飯を食べてお風呂に入って寝床につくと、何食わぬ顔をした太陽と朝が、今日もまたやってきた。

 いつものように学校にやって来ると、クラスメートのみんなは僕を見てはヒソヒソと何やら話してる。

 僕の悪口かな。もう、慣れたけど。

 それとも、これから実行しようとするイジメの内容について、相談しているのかな。それなら、用心しなくちゃいけないな……。


「おい!アレ、見ろよ!」


 クラスメートのうちのひとりが、窓の向こうを指差して叫んだ。