彼女の思考力にはよく驚かされる。

 僕の思考力が低いだけなのかもしれないけれど、それでも、僕には思い付かなかった話の打開策を、彼女はぽんぽんと提案してくれることが新鮮で、そして嬉しくて。

 そんな彼女のコロコロと表情が変わる様を見ているだけで、僕の心は十分、満たされていった。


「アンタにそう言う勇気がないなら、私が代わりに言ってあげるしさ!」

「えっ。それはさすがに……」

「あっ、そうだ。ついでにイジメの奴らにも一喝してやろうよ!そうしたらアンタの死ぬ理由もなくなるよね?」

「……そう、ですね。そのうち桃花さんにお願いするかもしれません」

「よっしゃ!任せなって!」


 ニカッと微笑む彼女に、胸の奥がキュンッとした。ああ、愛しいなぁ。


「そうだ!今度、アンタの家にお邪魔していい?」

「えっ」

「アンタの家族のみんなに会ってみたいし……。うーん、お土産は何がいいかなぁ?お母さんには綺麗な花とか?お父さんには……」

「桃花さん、」

「ん?なーに?」

「僕に母親は、いませんよ」

「……えっ?」

「事故で、亡くなりました」


 驚いた表情を浮かべた彼女は、すぐにバツの悪そうな表情を浮かべた。そして、申し訳なさそうに、謝る。


「ごめん、なさい……。アンタにつらいこと、言わせちゃった……」

「いえ。もう過ぎたことですし、桃花さんが謝る必要はないですよ」

「でも……」


 母親が死んでかなりの時間が過ぎた。正直、まだ未練はあるのだけれど、だからといって桃花さんが謝る必要はまったくないだろうに。