でも、そんな悲しそうな表情を浮かべる桃花さんもかわいくて、綺麗で美しくて、僕は彼女に気付かれないように、小さく吐息を漏らしたんだ。


「……なんて、私、何を言っちゃっているんだろう。アンタの相談に乗るつもりで話を聞いていたのに、変なことを言っちゃってごめんね?」

「いっ、いえ。話を聞いてもらえただけでも、とても嬉しいです」

「そう?えへへ、それならよかったー」


 にこり、そう微笑む彼女はやっぱりかわいくて、僕も思わず微笑んでいた。

 ……でも。

 この時、「――じゃあ、私も一緒に死んじゃおうかな。――」……彼女が放ったこの発言について、僕がしつこくでも聞いていたなら……。

 少しはいい未来を、歩んでいたのかもしれない。

 彼女と知り合って数日、彼女は毎日のように屋上にやって来ては、僕とたわいのない話をした。

 その時間を過ごせば過ごす分だけ、僕はどんどん彼女に惹かれていく。


「あっ、そういえばさぁ、アンタってこの病院の院長の息子さん……なんだよね?名字が天霧だし……」

「はい。そうですよ」

「へぇー!やっぱり!……んー、だからこそお金目当てで人に絡まれるのかねぇ?私にはそういう人達の考えがさっぱり分からないけど」

「はは。まぁ、人間ってそういう生き物ですし、仕方ないですよ」

「えっ、そういうもの?ってかさぁ、アンタもそいつらに言い返せばよかったじゃん!テメェらにやる金はねぇ!……なんつって」

「あはは……」