桃の花を溺れるほどに愛してる

 私は緊張でドキドキと高鳴る胸を押さえながら、ゆっくりと病院の中へと入って行った。

 広い病院の中から春人を見つけ出すことは出来ないと思うから、やっぱり受付の人に言った方がいいのかな?

 それとも、1度、携帯電話で連絡を……うーん、距離をとってしまっている今、会ってくれるかなぁ……?

 「今は桃花さんとは会いたくないです!」って、本音にしろ嘘にしろ言われたら会えない……よね、きっと。

 よし、ここはやっぱり、受付の人に声をかけてみるか……っ!


「あの、すみません!」


 私は受付の人――プレートには山内と書かれている――に声をかけた。


「はいっ。今日はどこを診てもらいたいのかしら?」

「あっ、そういうわけではなくて……天霧さんにお会いしたいのですが、今、会えますかね?」

「すみません。院長なら今は忙しくて、手が空いていない状態なんですが……」


 ……院長?

 あっ、そっか。正確にはまだ院長じゃないんだっけ?春人は。

 この場合、春人のお父さんを指していることになっちゃうのかな?