桃の花を溺れるほどに愛してる

 私は天霧総合病院に向かって走りながら、鞄の中から携帯電話を取り出し、家にいるであろうお母さんに対して電話をかけた。

 しばらくコールの音がした後、相手が受話器をとって電話にでた。


「……お母さん?私!桃花!」

「あら、どうしたの~?」

「私、ちょっと寄り道してから帰るね!晩ご飯までには帰るから!」

「ええ、分かったわ。車なんかの事故には気をつけて、いってらっしゃい」

「うん!」


 通話をきり、携帯電話を鞄にしまうと、思わず笑みが零れていた。

 よかった。もしかしたらダメって言われるかと思ったけど、お母さんはちゃんと許可をだしてくれた……!

 ……そういえば、私がやること、やろうと思っていることについて……あまり両親から反対を食らったことって無いような……?

 まあ、厳しい両親よりかは優しい両親の方がいいから、特に不満は無いんだけれどもっ。

 えっと……確か、あの信号を曲がってすぐのところに天霧総合病院はあるんだったような……?

 か細い記憶を頼りに、信号を曲がってみると……大きな病院――天霧総合病院が見えた。

 天霧総合病院には行った記憶が無いから、ちょっと心配だったけど……。

 無事につけてよかった!