桃の花を溺れるほどに愛してる

 相手のことが好きで好きでたまらないのに、思っていることと真逆の言葉を言わせるだなんて……私、本当に最低じゃんっ!!!


「ちょっ、桃花?!」


 意図せずとも流れ、頬を伝っておちていく、涙。

 それを見た京子は、ギョッと驚いた様子だった。


「どうしよう……!」

「桃花っ?」

「私、春人に悪いことをしちゃった……!本心で、私のことをちゃんと嫌ってくれているものだと思っていたのに……!嫌ってくれていないのに……『距離をおこう』って……言わせっ、ちゃ……た……っ!」


 京子は黙って私を抱き寄せて、頭をぽんぽんって撫でてくれた。まるで、泣いた子供をあやすかのように。

 私は自分の仕出かしたことが憎くて、今まで演技をしてきた自分が、ただただ憎くて……。

 できることなら、今すぐにでも会いに行って謝りに行きたい。


「桃花は何も悪くないよ。天霧さんも何も悪くない。だれも、悪くなんかないんだよ。天霧さんにとって桃花は特別な人だけど、桃花にとって天霧さんはそうじゃない……ただ、それだけのことなんだ。だから、最初から仕方のなかったことなんだ。自分を責める必要は、全くないんだよ。また新たな恋を見付けたらいいんだ。ね?だから、もう泣かないの」


 私は京子の胸の中で、涙が枯れるまで泣いた。泣き続けた。