桃の花を溺れるほどに愛してる

 桃花さんは優しいから、僕をフレない……そして、僕も桃花さんをフることは、絶対にない。

 こんなにも汚くて醜い僕なんかのために、今まで嫌々ながらも付き合ってくれて、ありがとう。本当に、本当に、心の底から感謝しています。

 でもね、ごめんなさい。桃花さんを手放す気は、毛頭ないんです。

 僕からフッて別れることが1番いいのは分かってはいるけれど、ごめんなさい、別れたくはないんです。

 僕の自分勝手で、僕のわがままなのは分かっています、ごめんなさい。

 僕は君が大好きです。

 僕は君を愛しています。


(君に、依存しています)


「……桃花さん、」

「……なに?言うなら早くして。私、今、機嫌が悪いんだから」

「すみません……。あのですね、桃花さん。僕、ずっと考えていたんですけど……」

「なによ?」


 僕はなるべくいつも話す時と変わらない口調で、その言葉を放った。


「――僕たち、少しの間、距離を置きましょうか」


 別れなくて、でも、繋がっていられる方法……それが、これだった。

 僕はしばらくの間、君に関わることはないだろう。君の前にも現れない。だから、君ももう、したくもない演技をしなくていいんだ。