桃の花を溺れるほどに愛してる

 今日も僕は、病院の仕事の休憩時間に桃花さんを家に送り届けるために、校門の前で待機していた。

 最初の頃は怪しいやつと思われて、学校の周りに立っている警備員さんに声をかけられたことがあったけど、今じゃすっかり警戒は解かれ、むしろ仲良くなった。


(おっ。そろそろかな?)


 警備員さんにお別れを言い、桃花さんがやってくるのを車の運転席で待つ。

 今回もまた、僕に嫌われようと“嫌われる女”を演じている……んだろうなぁ。

 そんなことをしても、無駄なのに。僕が桃花さんを嫌いになるだなんて、絶対にあるわけがない。

 まずいち、僕に嫌われようとするつもりなら、ここで待っている僕なんて無視して歩いて帰ったり、携帯電話だって着信拒否なりなんなりすればいいんだ。

 いや、そんなことをされたって絶対に嫌いになんてならないけれど。


(あっ、桃花さん、きた!)


 ……僕はね、桃花さんにしたくもない演技をさせてしまっているこの1ヶ月の間、色々と考えていたんだ。今この関係を続けるにおいて、何が1番いい方法なのか……。