桃の花を溺れるほどに愛してる

 なにより、それは僕の性(しょう)には合わない。

 桃花さんに、自分が少しでも嫌な思いをさせているのだと感じると、とてつもなく自分がイヤになる。……いや、イヤや嫌いを通り越して、憎い、かな?

 自分が憎くて仕方がない。思わず自分を殺してしまいたいほどに。ううん、殺さなくちゃ。こんな僕は、殺さなくちゃ。そうしたら桃花さんは僕という名の鎖から解き放たれて笑顔になれる。僕が死んだら桃花さんは喜んでくれる。“死んだら”じゃない。“死ななくちゃ”。

 何度、我が家でナイフを自分の喉元にあてがったり、首吊り自殺のためにロープを用意したり、飛び降り自殺をしようと屋上にのぼったことか……。

 でも、それは“逃げ”だから。

 僕は“あの時”、桃花さんの傍にいて、桃花さんを支えてあげたいって、支えなくちゃって……強く、思ったから。

 “あの時”の僕は、自分に対してそう約束したから。……破ることは、できない。

 だから、僕は、死ぬわけにはいかない。

 ……なんて、また僕は自分の意見を正当化させようとしているのかなぁ。

 僕は桃花さんの傍にいなくちゃいけないのに、桃花さんから最も離れた方が桃花さんのためだなんて……なんて神様は残酷なのだろう。