近寄ってきた麗の甘い匂いに。

その端整な顔に、思わずどぎまぎしてしまう。


おかげで答える声もぶっきらぼうだ。


「……私」


少し目を伏せながら、桃色の唇が開く。


息を呑みながら続く言葉の先を待っていると──。


「悠と一緒に、帰りたい」

「っ、!?」


出てきたのは想像以上に破壊力のある台詞だった。


わかってる、こいつのことだ。深い意味なんて無いんだろう。


だけど。


わかってはいても、ドキドキしてしまうのは仕方ないと思う。


「お、お前今日は俺担当じゃないだろ」


違う、そうじゃないだろ。


いいよバイクに乗せてやるよ、って一言言えばいいだけだろ。


本当は、麗が帰りたいって言ってくれて死ぬほど嬉しいくせに。