「体調が悪いなら、悪いって早く言えばいいのに」
屋敷に向かうアベルの肩の上で、ティアナはむくれていた。
アベルは手の上で小袋をぽんぽんと投げ遊びながら苦笑する。
「安心しろ、お前は間違ってない。体調が悪いなんて嘘だ、様子がおかしくなったのは明らかにパフィお嬢さんに会ってからだ」
「……」
やっぱりマルセルは、あの子にひとめぼれでもしてしまったのだろうか。
確かにあの少女はティアナが今まで出会ったどの娘よりも美しかった。
金色の髪は波うち煌いていたし、熱で潤んだエメラルドの瞳は、まさに宝石がはめ込まれているようにキラキラしていた。
サファイアを探してベッドの中に入ったときに見た白くて滑らかな肌は、同じ女性であるティアナですら息をのむほど。
ティアナはぐっと手を握りしめる。
「わたしだって、もとに戻ったら……!」
「ほら、ぶつぶつ言ってるなよ。もう着いたぞ」
いつの間にか屋敷の前についており、ティアナはアベルのシャツの中に身を隠す。
すぐにローサが出てきて、アベルをパフィの部屋へと連れて行った。



