次の日になっても、マルセルはどこかおかしなままだった。
窓際のテーブルで薬草をすり鉢ですりながら、ぼんやりと窓の外を眺めている。
そんなマルセルを目の前にしながら、ティアナは朝食のパンを齧る。
「どうかしたの? 昨日から少し様子が変だわ」
「そうかな。いつもどおりだけど」
どこがよ、とティアナは心の中で毒づいた。
いつもどおりだったら、大切な薬の調合でパンくずを使ったりしない。
「もしかして、あの子に恋でもした?」
「そんなのじゃないよ」
ティアナはむっと頬を膨らませる。
「じゃあなんなのよ。ため息ばかりついて、気持ち悪いわ」
「アベル、僕の代わりに彼女に薬を持って行ってくれないか。体調が悪いんだ」
薬の入った小袋を持ち上げながら、マルセルはベッドに横になっていたアベルのほうへ顔を向ける。
ティアナは少し赤くなった。
アベルは溜息をついてベッドから起き上がり、マルセルが手にしていないほうの小袋を手に取った。
「それはパン入り。正解はこっちだ」



