ティアナが少し言葉を濁したことにマルセルは気づいた。
彼女なりに何か思うことがあるのだろう。
そこに触れてしまわないように、マルセルは慎重に言葉を選んでみる。
「だけど、君はそこから出られた。これからたくさんのことを知れるんだね。いろいろ楽しいこととか、見つけられるよ」
「……!」
言葉を選んだはずなのに、ティアナは複雑そうに眉を寄せる。
そして床を睨みつけるようにじっと見つめたあと、深い息を吐き出した。
「……わたしもう嫌なの。ずっとお城に閉じ込められてたときみたいに、ただ待ってばかりいるのは……」
マルセルは黙ってティアナを見つめる。
「それに今回のことは、わたしのせいなの……わたしが指輪を受け取らなければ、こんなことにはならなかったの」
そこまで言って、ティアナははっと我に返ったような顔をして、あわてて笑顔を取り繕った。
「そう、さっきヘレンに聞いた話というのはね」
「うん」
マルセルはティアナに合わせて頷きながら、壁に背中を預けて毛布を体にかけると、ティアナを手の中へと誘い込む。
ティアナはおとなしく手の上に乗りながら、マルセルに向かって一生懸命話している。



