「ずいぶんお疲れみたいね。あんなに子どもたちとはしゃぎまわってたんだもの」
「アベルはきょうだいが多いんだ。だから子どもの世話は得意なんだよ」
「だからあんなに子どもたちの扱い方がわかっているのね」
納得しているティアナをそっと毛布の上に降ろしてやると、ティアナはくりっとした目をマルセルのほうへ向けてきた。
「あなたの家族は?」
マルセルはティアナの質問に、一瞬唇を噛んだ。
そしてそれを気づかれないように、すぐに口を開く。
彼女は純粋に尋ねているのだろう。
けれどもその質問は、マルセルには少し胸が痛いものだった。
「……いたよ。薬師になるために10歳のときに家を出るまではね」
「もう会えないの?」
「会えない。遠いところに行ってしまったから。ティアナは?」
「わたしは弟が一人いるの。いつもわたしのことを気にかけてくれてて……そういえば、あなたにちゃんと話したことなかったわね」
ティアナはマルセルの動揺に気づいてはいないようで、マルセルはほっと胸を撫で下ろす。
「わたし、ずっと城の奥に閉じ込められてたの。自由に動けるのは秘密の庭だけ。いつかそこを抜け出すことを夢見てた」
「へえ」
「そしたら、ここからは前に話した通りよ。男の人が庭園に現れて……わたしに指輪を渡したの……だからわたしは、今ここにいるのよ」
「……」



