マルセルは外で半刻ほど過ごしてから、音を立てないようにして静かに小屋の中へと戻った。
カーテンの隙間から入り込む月の灯りで、子どもたちがすやすやと眠っている姿が浮かび上がる。
その中で、マルセルと対角の位置にいる一番壁際の少女が毛布を頭からかぶり、何やらもぞもぞと動いている。
そこには確かヘレンが眠っていたはずだ。
ティアナが毛布の中から消えてしまっているから、きっとそのせいだろう。
ヘレンは水汲みに行ったあとからそわそわとして様子がおかしかったから、あのときからティアナと何かあったのかもしれない。
溜息をつき、何か面倒事が起こらないか見張っていると、しばらくしてティアナがヘレンの毛布の中から出てきた。
そしてマルセルの視線に気づき、慌ててこちらへ駆け寄ってくる。
「君は本当にお転婆だね」
気まずそうな顔をしているティアナにそう言うと、彼女は少し顔を赤くした。
「別に昔からそうだったわけじゃないのよ」
「それで、何してたの? ヘレンにはどこかで見つかってたみたいだけど」
「ヘレンから話を聞いていたの」
「話?」
マルセルが首を傾げたところで、アベルが寝返りを打った。
その拍子に腕がティアナめがけて振り下ろされ、マルセルは間一髪のところでティアナを拾い上げた。
「んん……」
アベルは口を開けて爆睡しており、マルセルたちが迷惑しているのには気づかない。
そんなアベルの様子を見て、ティアナはくすっと笑う。



