急に恐ろしくなって、ティアナは動けなくなった。
心臓が激しく鳴っている。
もしも捕まったら、無事ではすまない。
逃げなくてはいけないとわかっているのに、恐怖で体が動かない―――
そして木の上の何かの、煌く目をみつけてしまった。
「っ」
それが素早く木から飛び出し、薄闇に浮かぶシルエットから鳥であると確信する。
もうだめだ、と目をつぶったとき、
「きゃっ」
背後から暖かい手に包み込まれ、体を持ち上げられた。
驚いて顔を上げる。
「……マルセル!」
マルセルは襲ってくる鳥から腕でティアナをかばった。
マルセルの手の中で、震えながらぎゅっと目を瞑り、激しい鳥の羽音を聞いていた。
やがて鳥があきらめ、羽ばたきが遠ざかっていくのを感じて目を開けると、不機嫌そうなマルセルと目があった。



