ヘレンはそう言うと、バケツに水を汲んで嬉しそうに小屋へ戻っていき、ティアナは少し途方にくれた。
森に棲んでいる妖精ということになっているティアナはヘレンに泉に置いて行かれ、自分で小屋まで帰るはめになったからだ。
小さい体には遠い道のりを、ティアナはせっせと歩く。
自分の背丈よりも高い草をかき分けながら、マルセルのポケットから抜け出してきたことを少しばかり後悔した。
思えば、一人でこうして外を歩くのは初めてかもしれない。
小さくなったときから、ずっとマルセルがついていてくれた。
おかげで小さな体でも、これまでたいして不便なことはなかったような気がする。
「ふう……」
日が暮れはじめ、辺りは薄暗くなってきている。
小屋まであと少しのところでちょうどいい具合の小石を見つけ、そこで休憩しようと腰をおろしたときだった。
目の前にある大きな木の上で、何かが動いたような気がした。
はっとして木のほうを見上げても、木の枝や葉が邪魔をして、何がいるのかわからない。
(もしかして、ふくろう? それとも、何か別の……)



