しばらく胸を高鳴らせながらマルセルの様子を窺い、大丈夫そうだと思うとポケットから抜け出て床に転がっていたバケツの中へと隠れた。
そしてほっと息をつく。
また隙を見てバケツから抜け出そうと企んでいると、ふいにヘレンが流しの作業をやめて、ずかずかとこちらへ向かってくる。
そしてそのまま、あろうことかバケツをひょいっと持ち上げた。
「水を汲んでこなくちゃ」
(しまった……)
ティアナが狼狽えていることも知らずに、ヘレンはティアナ入りのバケツを手に、小屋のすぐ裏にある泉のところへと駆けて行った。
森の中にあるだけあって、そこにはきれいな湧き水が湧いている。
ヘレンがさっそく泉の中にバケツを突っ込もうとしたので、ティアナは声をあげてしまった。
「待って! やめてー!」
ティアナの声に驚いたヘレンが手を離したせいでバケツは地面に転がり、ティアナは衝撃に尻もちをついてしまった。
痛みに顔をしかめていると、ヘレンがバケツの中をおそるおそる覗き込んできて、彼女とばっちり目が合ってしまった。
ヘレンはしばらくぱちくりと目を見開いていたが、次第に嬉しそうに顔を輝かせた。



