ティアナはむくれながらポケットの中に一度引っ込んだ。
あきれるマルセルに、ヘレンが野菜の入った籠を渡している気配がする。
「じゃあ、マルセルお兄ちゃんはこれお願いするね」
「わかった」
ヘレンが流しのほうへ行ったのを確認してから、再びティアナは顔を出した。
マルセルは渡された籠の中から野菜をひとつ選びとり、皮を剥いている。
「ねえ、あの子変じゃない?」
小声で話しかけると、マルセルも手を動かしながら小声で返してくる。
「変って?」
「妙にキラキラした目で、マルセルたちを見てるわ。何か企んでるのかしら」
「あんな可愛い子の企みなら、いくらでも乗っかってあげるよ」
「あっそ!」
ティアナはさっとポケットに引っ込み、にやにやする口元を抑えた。
こうしておいて、ティアナがあきらめたと思い込んでいるマルセルが野菜の皮を剥くのに夢中になっているうちに、そっと抜け出す作戦だ。



