「ここには君たちだけで住んでるの?」
「ううん。リュイばあもいるよ。今は部屋で眠ってるけど」
そう言ってヘレンは奥の扉を指さす。
どうやらあの部屋に、彼女たちの保護者であるおばあさんがいるらしい。
挨拶しないでいいものかと思っていると、ヘレンはさっと椅子を引いて、マルセルに座るように促した。
アベルはさっそく子どもたちの遊び相手となっていて、抱きあげたり追いかけたりしながら、楽しそうに遊んでいる。
「待っててね、今からごはんつくるから!」
「料理なら得意だよ。僕も手伝おう」
マルセルがヘレンとキッチンへ入るので、必然的にティアナもついていくことになる。
キッチンという場所に初めて入るティアナは、よく見てみたくてポケットから少し顔を出したが、すぐにマルセルに引っ込まされた。
「わたしも何かしたいわ」
ポケットの中からこっそりマルセルに声をかけると、マルセルは首を横に振った。
「君の姿だと道具は重いし、うっかり姿を見られたら大変だ」



