「びっくりした。人間の女の人だったわ」
「なんだと思ったの?」
マルセルの問いには答えず、ティアナは座り込んでいる女性に目を向けた。
「誰もいないと思っていたのに……この家の人かしら」
彼女はすすり泣いている。
そばには彼女のものらしきロケットが落ちていて、さっきの物音はロケットが床に落ちた音だろうと察した。
「……」
黙って様子を窺っていると、やがて彼女は涙をハンカチで拭い、立ち上がった。
マルセルはすかさずその場を静かに離れ、隣の部屋へと身を隠した。
女性はまだ何かしているようで、なかなか部屋から出てこない。
マルセルがドアに耳をつけて彼女の様子を窺っているあいだに、ティアナはポケットから抜け出してマルセルの肩によじ登り、身を隠した部屋を見渡した。
薄闇に光るものを発見し、ティアナはいそいそとマルセルの服を伝ってチェストの上に着地した。
音をたてないように注意しながら目的のもののそばへいき、そっと拾い上げた。
いいものを見つけた。
「人がいるなら、こっちも対策を練らないとね」
ティアナの小さな呟きを聞き逃さなかったマルセルが振り返り、ティアナが握りしめているものを見て眉を顰めた。



