「平気だ、早く逃げろ」
そう言われた瞬間、背後に気配を感じて、さっと振り返る。
そこにいた人物に、ティアナはみるみる顔を強張らせた。
「マクベス王……!」
フードを被った若者姿のマクベス王が薄い笑みを浮かべて立っていた。
マルセルは彼からティアナをかばってくれたのだ。
「まったく、お前たちは本当に俺を手間取らせる」
ティアナがマクベスを睨むと、彼はふっと鼻で笑った。
「お前を王宮に連れてこようとしたのに、あと少しというところで指輪が抗った。マルセルの仕業だろうがね」
マクベスがマルセルに視線を向け、笑みを消した。
マルセルは黙ったまま腕を押さえて顔を歪めている。
「……マルセルは天才だった。魔力はそれほど大きくはないが、組み合わせるセンスがいい。他の魔導師より複雑な魔法を難なくこなす子だった」
そして再びティアナに目を向け、ティアナは身構える。
「しかしこの魔法を発動させるには、ティアナ、お前の力が必要なのだ。魔導師が束となっても補えないほどのお前の魔力があれば……」



