指輪を使ってコレンタまで移動すると、懐かしい景色が目に飛び込んできた。
移動した先はいつもティアナがいた、あの庭園の中だった。
ただし、花も木もすべてが灰色に染まったままだ。
「……やっぱり、この目で見たことは夢じゃなかったのね」
呟くティアナにマルセルが心配そうな視線を向ける。
少し離れた薔薇の植木の傍では、ラナがあの日のままの姿でいた。
「ラナ……」
ラナに近寄ろうと、足を動かしたときだった。
「ティアナ!」
マルセルが叫んで、ティアナを引き倒した。固い地面に倒され、ティアナは痛みに顔を歪めながら体を起こした。
すぐ隣で同じように倒れていたマルセルが小さく呻き、ティアナははっとして彼の体を見た。
「マルセル!」
マルセルの腕から紅い血がじわりとあふれ出てきて、何が起こったかわからないティアナは狼狽えながら傷口を抑えようとしたが、マルセルにそれを制された。



