「王はコレンタに行くと言っていた。きっとそこにいるはずだ」
エリアルの部屋から出ると、マルセルがそう告げた。
ティアナは頷き、手元の指輪に視線を落とした。
「無理しなくていいんだよ。2人だったら僕でも運べるから」
ティアナは首を横に振って、マルセルを見上げた。
「平気よ。わたしは……きっとわたしが間違っても、この指輪が助けてくれるから」
思えばずっと、この指輪はティアナを助けてくれていた。
「この指輪は呪いの指輪なんかじゃないわ。わたしを守ってくれる、魔法の指輪」
ずっと出たいと願っていた庭園から解放してくれた。
ティアナを狙うマクベス王から逃がしてくれた。
そしてマルセルのもとへ運んでくれた。
「それにわたしは、今ならなんだってできるわ。助けてもらってばかりのお姫様じゃないんだから」
そう意気込むティアナに、マルセルが微笑みを向ける。
「ティアナは最初から頑張り屋だったよ。だから僕は手を貸したかったんだ」
「えっ?」
「さあ、行こう。王妃様の想いを届けに」
戸惑っているとマルセルに手を差し出され、ティアナは頷いてその手を取った。



