ティアナは蹲ったまま、自分の両手を見つめた。
ずっと憧れていたものが、この手の中にある。
夢の中でもなく、幻でもなく。
ティアナの手は小さく震えているが、先ほどまでの震えとは違うものだ。
指輪をはめている手を包み込むようにして、強く握りしめた。
やがてティアナが立ち上がると、エリアルは安堵の表情を浮かべた。
そして小さく咳をすると、マルセルの手を借りてベッドに横になった。
長く話していたせいか顔色が悪いようだ。
「ごめんなさい、無理をさせてしまって……」
「いいの。今伝えなくては、わたしにはもう時間がないから」
彼女は細い指で、ティアナの指輪を指し示す。
「そのルビーにマクベスへの贈り物をいれておいたわ。無事に届けてね。そして彼を止めてちょうだい……」
彼女にルビーに触れるよう促され、煌く赤い宝石に触れると、指先を通して彼女の想いが入り込んできて、ティアナは涙を流した。
「必ず届けるわ、エリアル」
ティアナが強くそう告げると、エリアルは少し微笑み、ゆっくりと睫毛を伏せて眠り落ちていった。
彼女はもう、長くはない。



