「サファイアのことですが……パフィはまだ宝石に順応できていません。もう少しお待ちいただけますか」


「……よかろう。まだルビーも手に入れていないことだしな」


そう言ってマクベスはフードを被りなおす。


「コレンタに行く……しばらく戻らない。お前はまた、指輪に力を送れ」


マルセルは去っていくマクベスに静かに頭を下げた。



やがて王の姿が見えなくなると、懐から指輪を取り出す。



ティアナから奪った魔法の指輪。



初めてこの指輪を見たのは、10歳の頃に王宮へ上がってすぐのことだった。


それからマルセルは王宮から抜け出すその日まで、ずっとこの指輪とともに過ごしてきた。



国王の命によって。



ぼんやりと指輪を眺めていると、指輪を抜き取ったときの、泣き出しそうな顔をしていたティアナを思い出し、マルセルはきゅっと指輪を握りしめた。


「君が無事でいますように」


そう小さく呟いたあと、指輪を懐に戻し、マルセルは歩き出す。




もう、あとには戻れない。