空になった器を手に廊下へ出ると、背後から何者かに肩を掴まれた。


振り返ればそこにいたのは、相変わらずフードで顔を隠した国王その人だった。


マクベスはフードを脱ぎ、屈託のない笑顔をマルセルに向ける。


「マルセル。お前が王宮へ戻ったと聞いて飛んで帰ってきたんだ。手土産もあるなんて喜ばしい限りだ」


その顔は若い青年のものであるが、それは人を欺くために魔法で見た目を変えただけの仮の姿。


本当の年齢はエリアルよりも少し上だ。


確かに今の彼の姿は若いけれども、身に纏う気はとても若い男が出せるものではない。


マルセルは背中を叩いてくるマクベス王に冷めた視線を送りつつ、申し訳程度に頭を下げる。


「……陛下。王妃様があなたに会いたいとおっしゃっていましたよ」


「……」


マクベスは薄い笑みを浮かべたまま、マルセルが今しがた出てきた扉を無言で見つめる。


黙ったまま瞳を揺らす国王に、マルセルは話題を変えようと口を開く。