「……やるべきことを見つけたからです」


「そう……。ありがとうマルセル。やっぱりあなたの薬が一番よく効くわ」


エリアルは再び横になると、遠くを見るような目をして少し寂しそうに眉を下げる。


「マクベスには会った? 最近あの人の姿を見ていないの。もし会ったらわたしが顔を見たがっていたと伝えておいてちょうだい」


薬が効いてきたせいかエリアルは眠そうにまばたきをして、そのまま目を閉じてしまいそうだった。


「エリアル様」


エリアルに尋ねたいことがあったマルセルは、慌てて夢の淵にいるエリアルに声をかける。


「コレンタの王女のことをご存じですか?」


エリアルは薄っすらと目を開き、考え込むように口元に手を当てる。


「……ああ。あの可愛らしい王女さま……ティアナといったかしら。花の庭園に閉じ込められてるあの子のことを、ついマクベスに話してしまったの。それがいけなかったわね……」


王妃の声はだんだん小さくなっていき、それに伴いまぶたも落ちていく。


「あの人がよからぬことを企んでいるのは知ってるわ。でもわたしには、もうそれを止める力がない……」


完全に目を閉じてしまい、エリアルは夢の中へと入っていった。


眠ってしまったエリアルを、マルセルは黙って見つめた。


エリアルは長い間病で床に臥せ、衰弱してもう歩くこともできない。

魔法の薬でつないだところで、彼女はもう長くないだろう。


そのことはきっと国王が一番よくわかっている。