「あの若者の正体は、ここへ来たときから気づいていたよ。うまく隠しているつもりだったようじゃが、わしの目はごまかせぬ」


「でも、わたしわからなかったわ。今までマルセルに魔力なんて感じなかった」


魔法の国で育ったティアナは、魔法が使える者たちが常に纏っているものは感じ取ることができていた。


それなのにマルセルからは何も感じなかった。

それに初めて会ったあの日だって、マルセルは魔法を使えないと言っていたはずだ。


リュイは首を横に振り、ティアナを真っ直ぐに見る。


「……金の髪留めをつけておったろう。あれは魔法を封じ込める道具じゃ」


「髪留め……」


ティアナは瞳を揺らし、うつむいた。


マルセルが髪留めを外したときのことを思い出す。



あのときマルセルが髪留めを外した瞬間に感じたのは、強い魔力。



それがマルセルから感じたものだとは信じたくなくて、ティアナは目をそらしていた。

認めてしまえば彼が魔導士だというのが、確実なものになってしまうから。


しかしもう認めるしかない。

そしてマルセルは、自分が魔導士であることを隠し続けていた。


それが何のためかはもう、答えがみえているようなもの……