痺れはやがて治まり、ティアナとアベルは体を起こす。


「くそ……」


アベルは悔しそうに表情を歪め、荒々しい動作で床の上にあぐらをかいた。


ティアナはそんなアベルに目もくれず、ただひたすら手元を見つめて考え込んでいた。




マルセルはあの指輪と、何か関わりがあったのだろうか。



いつからティアナを裏切ろうとしていたのだろうか。



パフィに会ってから? 



フードの男と顔を合わせてから? 




それとも、最初から―――?




最後に見た、見慣れない衣装を着てこちらを見下ろしていたマルセルを思い出し、ティアナはぎゅっと手を握りしめた。


そのとき、扉の向こうから、騒がしい足音がこちらへ向かって近づいてくるのに気づいてはっと顔を上げる。


足音からして、十数人はいるようだ。


「次から次へと……一体何が」


アベルがそう呟いた瞬間、部屋の扉が開いた。


マントに身を包んだ怪しげな集団が入り込んできて、ティアナとアベルは身構える。


「指輪の姫はここか」


黒マントの集団の中から、一人白いマントを纏った人物が抜け出てきて、ティアナを見下ろした。