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1
恋縛少年
寂兎/著

総文字数/532

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「おにーちゃん、私の手袋みなかった?」 「ああ、あのぼろっちい軍手?」 「軍手じゃないよっあれは大切な・・・・」 「あーごめん目障りだったから捨てといたわ」 「・・そんな」 「だったらリビングに放置しとくなっつーのばーか」 「ひどい」  憮然とした唇。  恨めしそうな瞳。  わなわなと微かに震える拳。  全部、全部俺への嫌悪に、怒りに耐えているためだ。  妹は、緑は普段温厚で大人しい気質で俺と正反対。  こうして怒りをあらわにするのは珍しいことだ。  あくまでも、他人からしたら、の話だが。  このことでどれほど俺が影響を与えているかがわかる。 「昔はあんなに優しかったのに、どうして最近のおにーちゃんはそんなに冷たくなっちゃったの?」 「はっ『優しかった』兄貴?んなもんハナからいねぇよ。バカじゃねぇ。お前昔からそうだよな。頭ん中空っぽで、物事の表面ばっか見てさ。同級生が皆お前のこと『優等生』だとか『かわいい』とかチヤホヤしてんだろ。ああいうのいってるやつ皆裏でお前の悪口ばっか言ってんの。」 「やめて」 「俺もそうだよ。ちっせぇ頃からお前が目障りでしょーがなかった。『おにーちゃんおにーちゃん』てさ。仕方ねえから『優しい』おにーちゃんやってたんだよ」 「・・・・おにーちゃんなんて大ッ嫌い!!」  緑はそう俺に浴びせると部屋から出て行った。  言葉が頭の中で反響する。  耳朶の甘い響きが消えてゆくのが名残惜しい。 「・・・・・・ああ、俺も、お前のことが『大っ嫌い』だよ・・・・・・」    熱を持った掠れた声は部屋の冷たい空気の中に溶け込んでいった。
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