＊　＊　＊


　別に、俺が篠塚と口を利かなくなったからといって何が変わるというわけじゃない。

　もともと、学校にいるときは同性の友達とつるんでいたし、それは向こうだって同じだ。

　必要以上に仲良くしないのが、暗黙のルールだった。

　それでも、俺と篠塚の関係は変わってしまった。

　いや、変わったのは俺だ。

　俺は篠塚を無視してた。

　青山を盗られたような気分になっても、始めっから青山は俺のじゃないし、裏切られたような気分になったって、篠塚の気持ちはずっと一貫している。

　好きになったのは、青山の方からなんだ。

　それに、例え青山と篠塚が付き合うようになったところでそれを責める権利は俺にない。

　そう冷静な声が聞こえても、ごちゃまぜになった感情は篠塚との接触を避けさせた。

　青山が篠塚のことが好きだと知って、俺と篠塚との関係は変わってしまった。

　なのに、俺と青山の関係はなにも変わらない。

　青山の気持ちを知らない振りをして、今まで通り。

　自分の青山への気持ちを隠して接するのと同じだ。

　もう、慣れっこ。

　青山の方はは以前より篠塚を気にしてるように見えて、篠塚はあからさまに青山を避けていた。

　そんなときに青山が見せる沈んだ表情が痛ましく、青山にそんな表情をさせられる篠塚が羨ましかった。

　俺も、青山のトクベツになりたかった。