『お客さん、困ります…!』


アレンに告げられたタイムリミットを気にして早歩きを始めようとしたその時、揉めているような男性の声が耳に届いた。

思わず足を止めると、八百屋の前で店の主人が二人組の男と言い争いをしているようだ。

ただならぬ雰囲気に、つい、テントに足が向く。


「おじさん!一体、何の騒ぎ?」


『おぉ、ニナちゃん…!実は、お客さんが言いがかりをつけてきてね…』


困惑した主人の前に立ちはだかる二人組の男。人相が悪く、明らかにクレーマーだ。

悪事に慣れているような彼らは、引く気配もなく威圧的な態度で主人に迫る。


『このトマト、随分腐ってるだろう?他と同じ値段で売るなんて、詐欺じゃねえか!半額にしてくれなきゃ困るぜ!』


『そんな!ウチの野菜はいつも新鮮です!腐っているわけがありません!』


『いや、前に買った時にとても食べられたもんじゃない味だったんだ。また不良品を買わされても困るからな!』


(まさか、難癖をつけて野菜を安く買うつもり…?)


彼らの魂胆を見破った私は、つい、彼らの前に躍り出た。


「ちょっと。大人として、それはないんじゃないの?トマトの新鮮さくらい、ヘタや色を見ればわかるじゃない!」


『あ…?なんだ、おチビちゃん。文句でもあるのか…?』