ケータイ小説 野いちご

あり得ない男と、あり得ない結末

私はそもそも、誰かと親しくすることに慣れていないのだ。
田中不動産の創始者の息子としてそれなりに裕福に暮らした父は、独立してからもその生活スタイルを保っていた。家族三人で暮らすには広すぎる屋敷。その屋敷をお嬢育ちの母が管理できるわけでもないから、通いのお手伝いさんもいた。私が与えられた“あたり前”は、他の人から見れば行き過ぎた裕福なわけで。当然、常識も違う。いわゆる“お嬢様”扱いをされるのは、仕方がなかったのだろう。

幼稚園から大学まで、私立のお嬢様学校に通った。一歩置いた友人関係、羽目を外すことはしない。親に反抗することもなく決められたルートをまっすぐ進む私は、見る人によってはポリシーのない女に映ったかもしれない。

だけど、私なりのポリシーはある。
期待に応え、与えられた愛情を返していくのだ。
父は男の子が欲しかったけれど、生まれたのは女の私ひとり。ならば女でも構わないと、父は教育と教養を与えてくれた。
生まれてすぐに私は父の期待を裏切ってしまった。ならばその先の人生、父の期待に応えて生きるのだ。

私も父も、愛情の与え方や受け取り方も間違っていたのかもしれない。
それでも、お互いに譲歩しながら今の道を歩んできた。
だから私は受け入れるのみ。次の政略結婚の話も。


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