「だいじょう……うぷっ」


「おい、ここじゃ吐くなよ!」


まだ証拠が見つかるかもしれない事件現場で嘔吐なんてされたらたまらない。


俺は城を引きずるようにして公園のトイレまで移動した。


城は歩くのもやっとという様子で、個室に入るや否や、胃の中のものをすべて出してしまったようだ。


全く、しょうがないヤツだな。


トイレの前で城を待ちながら、俺は昨日聞いた声を思い出していた。


『椿のように散って死ね』


あれは何時ごろ聞いた声だったんだろうか?


こんなことになるなら、時間をしっかり確認しておけばよかったかもしれない。


そう思うが、今更悔やんでももう遅い。


それに、あの声は女の子のものだった。


幼さの残る、つたない声。


事件に関係しているとは思えないけれど、夜中に物騒な言葉を発するというのが気になった。


うちにも警察の人が事情を聴きにくるだろうし、その時に一応話してみるか。


俺はそう思い、青い顔で出て来た城にため息をついたのだった。