連れられてやってきたのは、フルリエルや天幕街がある王都の南側ではなく、王都の東側の方だった。

都会的な雰囲気の漂う東側には、服や雑貨などお洒落な店がいくつも軒を連ねている。リルはまだ訪れたことない場所で、次から次へと現れるショーウィンドーに目を奪われた。


「ここだよ」


突然アーディが立ち止まったかと思えば、目的の場所だと知らされる。

アーディが指さした方へ目を向けると、そこは沢山の装飾品が飾られている店だった。

入り口の上には「クリーム・クレーム」と書かれた看板がある。きっとこの店の名前だろう。

アーディは何の気なしにドアを引いた。カランコロンと軽やかな音と共に扉は開いた。


「こんにちはー」


そう呼びかけると奥から「はーい」という年配の女性の大きな声が聞こえてきた。

しばらくすると花柄のシャツにピンク色のスーツを着て同じ色の帽子を被った、ふくよかな女性がやってきた。

女性はアーディを一目見ると、ショッキングピンクの口紅が塗られた大きな唇の両端をあげて、鮮やかなパステルブルーで彩られた瞼も見開いて、嬉しそうに抱きしめた。


「あらん!アーディじゃないの、久しぶりねん!」

「お久しぶりです、マダム・マドレーヌ。お元気そうで何よりだ」


二人は知り合いのようで、リルの目には二人は仲が良いように映った。


「相変わらずアーディは可愛いことを言うわねん!んもう、本当にいい子なんだからん!」


「そんなこともないですよ」とアーディが微笑みながら言うと、マドレーヌはその後ろにリルがいたのを見つけて「あら、アーディの新しいガールフレンドかしらん?」と目を鋭くした。