振り返るとそこにいたのは、エプロン姿のアーディだった。アーディは手を振ってくれていたが、その手には「リュートの店」という看板を持っていて、どうやら宣伝をしているらしかった。

リルはアーディのもとに駆け寄ると、「どうして市場にいるんだい?」と問われた。


「リュートの店を探していたの」


その言葉にアーディは目を丸くして、それからリュートの店まで案内してくれた。


「へい、いらっしゃい」


リュートの店と書かれた看板の天幕の暖簾をくぐると、板を置いただけの簡易的なカウンターと椅子が4つ置かれているだけだった。


「お、フルリエルのバイトちゃんじゃないか」


リュートはリルの顔を見ると愉快そうに笑った。


「リルです」

「そうそう、リルちゃん。覚えてるよ。今日はバイトは休みか?」

「いえ、そういうわけでは」

「天幕街に何か用事でも?」

「はい、リュートの店を探していました」


するとリュートは驚いた様子で目を丸くした。


「俺の店を?」


この反応は先ほどのアーディの反応にそっくりだった。否、アーディがリュートに似たのだろう。師匠であるリュートをずっと見ていたからこそ移ったものに違いない。

そうであるなら自分もいつかオリバーに似てくるのかもしれないとリルは思って、オリバーを想像してみたがどんなところが似るのだろうかと考えてみたが、あんなに凄い人に似ている部分なんて自分にはできそうもないと思った。