「なんだ、テメェ!」

「何者だ!」

おじさん二人は懐からナイフを取り出して構える。



「お前らには名乗る必要はない」



その人は不敵な笑みを浮かべて、真っ直ぐ目を見据える。


「調子に乗りやがって!」


斬りかかろうとおじさん二人が飛び出すと、若い男の人の脇から兵服を着た人達何人も出てきた。


「なっ、なんだ、テメェら!」

「ローダン騎士団の者だ!」

焦るおじさん達に兵服の人は高らかにそう名乗りをあげると、あっという間におじさん達の身柄を拘束した。

若い男の人はテントに入りながら、「人質の安全確保を」と騎士団の人に指示をして私に近づいてきた。

そして横たわる私の前でしゃがみ込み、私の口を覆う布を取り払うと「やっぱりお前だったか」と溜め息を吐いた。


「だから言っただろう、気をつけろと」


それみたことかと馬鹿にされ、リルは苛立ったけど何も言える立場にはないと口をつぐんだ。

その人はリルの手と足を縛っていた縄を簡単に解いて、「立てるか」と手を貸してくれた。

「ありがとうございます」と返事すれば、その人は私の頭をポンとなでつけた。それからすぐに騎士団の人から報告を受けてどこかへ行ってしまった。

自由に動く手足を見て、ああ助かったのだと思うとほっとして涙が滲む。

(良かった、私、生きてる。)

リルは自分の体を抱きしめた。涙が浮かんではこぼれて服に染みをつくった。