「美津は会いに行ったんだ。彰に会いに行った」


翔太がどこか嬉しそうな声色でそう言った。


あたしはハッとして翔太を見る。


翔太の目はうつろで、口元には笑みをたたえている。


「翔太……?」


嫌な予感が胸をかすめる。


「なぁ、彰は死んだ後でもここまで歩いて来たんだろ? すごいよなそれって。家に帰りたくて帰りたくて仕方なかったんだろうなぁ」


翔太はそう言いながらガードレールに身を乗り出した。


「翔太!」


あたしは翔太の服を掴み必死に引き止める。


渉はまだ電話をしているようで、少し離れた場所にいてこちらに気が付かない。


「なぁ、俺もそんな彰に会いたいよ」


翔太の体がグラリと揺れる。


「渉!! 助けて!!」


悲鳴に近い声を上げるのと、翔太の体が用水路へ落下していくのはほぼ同時だった……。